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生産現場において短時間かつ安定した接合が求められる場面では、スポット溶接が多く活用されています。特に自動車ボディの組立ラインや家電筐体の溶接工程、板金部品の接合作業などで、その生産性と信頼性が評価されています。
スポット溶接は、重ねた金属板の接合部分に電極で圧力をかけながら電流を流し、抵抗熱によって一時的に溶かして接合する抵抗溶接の一種で、1箇所1秒以下の短時間で確実な接合が可能な点が大きな特長です。
溶接は大きく分けて「融接」「圧接」「ろう接」の3種類に分類されます。
スポット溶接は、電気抵抗熱による局所的な加熱と圧力を組み合わせた「圧接」に分類される溶接方法です。電極からの圧力によって金属を密着させながら、電流を流して加熱・溶融し、冷却することで接合を行います。
種類 | 説明 | 例 |
---|---|---|
融接 | 金属を加熱して溶かし、接合する方法 | アーク溶接、レーザー溶接 |
圧接 | 加熱または摩擦を利用して、圧力を加えながら接合する方法 | スポット溶接、摩擦圧接、超音波溶接 |
ろう接 | 溶接する母材は溶かさず、ろう材を溶かして接合する方法 | はんだ付け、ろう付け |
スポット溶接では、電極を金属板に押し付け、大電流を流すことで金属を局所的に加熱し、溶融させます。その後、電流を止めた状態で圧力を加え続けることで、冷却・凝固し、強固な接合部が形成されます。
具体的な手順は以下の通りです。
1)電極で金属板を挟む | 銅合金製の電極を用いて、2枚の金属板を挟みます。 |
2)電流を流して加熱 | 大電流を短時間(通常0.01〜0.5秒程度)流し、金属板の接触部に電気抵抗熱を発生させます。 |
3)金属の溶融と圧着 | 熱により金属が局所的に溶け、電極からの圧力で圧着されます。 |
4)冷却と固着 | 電流を止めた後も圧力を維持しながら冷却することで、強固な接合部が形成されます。 |
スポット溶接には、以下のようなメリットがあります。
自動車のボディやフレームの組み立てに広く用いられています。軽量化と強度を両立させるために、スポット溶接技術が欠かせません。
エアコンや洗濯機の外装部分の接合に活用され、強度と美観を両立させています。
スマートフォンやノートパソコンの金属フレームにもスポット溶接が利用されており、精密な接合技術が求められます。
スポット溶接の外観は一見シンプルに見えますが、接合の深さやナゲット径といった内部の品質は目視だけでは判断が難しいのが現実です。そのため、実際の現場では、目視検査は簡易的なチェック手段として使われることが多く、熟練者の目に頼る部分も少なくありません。
自動車のブレーキ部品やボディ骨格のような“重要保安部品”では、万が一の破損が走行中の事故につながる可能性があります。そのため、以下のような検査が実施されます。
これらの検査を通じて、スポット溶接の品質が基準を満たしているかを確認しています。
実は、すべてのスポット溶接が検査されているわけではありません。製品の種類や用途によっては、以下のような理由で目視検査すら行われないケースもあります。
こうした場合には、あらかじめ設定された溶接条件の妥当性を確認し、「工程そのものを信頼する」ことで品質保証とするのが一般的です。
これを「工程保証」と呼び、品質管理の重要なアプローチの一つとなっています。
近年では、レーザー溶接やロボット溶接との組み合わせにより、さらなる精度向上や自動化が進んでいます。また、AIを活用した品質管理技術も登場し、不良率の低減が期待されています。
スポット溶接は、製造業において重要な接合技術の一つであり、コスト削減や生産効率の向上に貢献します。また、省エネルギーで環境にも優しく、仕上がりが美しく追加作業が少なくて済むため、効率的な製造をサポートします。今後も、スポット溶接の技術は進化を続け、製造業全体での活用範囲がさらに広がるでしょう。
2025.05.26
この記事では、溶接の基本的な定義と、溶接方法の種類を紹介しています。アーク溶接、MIG溶接、TIG溶接などの手法が取り上げられ、それぞれの特徴や用途について解説。また、溶接とリベット接合やボルト接合、接着剤接合などの他の接合方法との比較も行い、最適な方法を選ぶための指針を示しています。…