溶接とは?溶接の種類とほかの接合方法との比較

【POLASTAR-三次元計測】

溶接は、2つ以上の金属材料を熱や圧力によって接合する技術です。建築、自動車、航空宇宙、DIYなど、私たちの生活の様々な場面で利用されています。この記事では、代表的な溶接の種類と特徴、用途別の選び方、安全対策について解説します。

溶接作業のイメージ

基本概念

溶接は、部材同士を溶かして一体化させることで、非常に強い接合を作る技術です。溶接には「融接(ゆうせつ)」「圧接(あっせつ)」「ろう接」の3つの方法があり、最も広く利用されているのは「融接」です。これは、金属を溶かして接合する方法で、主に溶接棒や溶接ワイヤーを使用して、熱源(例えばアーク)で金属を溶かし、接合します。 一般的に溶接=融接のイメージが広く浸透しています。

分類 説明 代表的な方法
融接 加熱して材料を溶かし、接合する アーク溶接、ガス溶接、レーザー溶接
圧接 圧力をかけて材料を接合する 摩擦圧接、拡散接合
ろう接 母材よりも低融点(ろう材)を溶かして接合する はんだ付け、ろう付け(銀ろう、銅ろう)

 

歴史

溶接技術の起源は古代にまでさかのぼりますが、近代的な溶接技術の発展は19世紀末から20世紀初頭にかけて進みました。特に1900年代初頭、アーク溶接が発明されることで、鉄道建設や船舶、建築業界などで広く活用されるようになりました。現在では、自動車や航空機などの製造にも欠かせない技術として、進化し続けています。

2.溶接と他の接合方法(ボルト締結・リベット・接着)との違い

溶接以外にも、金属同士を接合する方法として「ボルト締結」「リベット接合」「接着」があります。それぞれの特徴と違いを見てみましょう。

ボルト締結

ボルト締結は、部品をボルトとナットで締め付ける方法です。簡単に取り外しができ、部品の交換やメンテナンスが容易に行えますが、接合部にボルトが露出しているため、強度が溶接に比べて低くなることがあります。特に大きな荷重がかかる構造物では、溶接の方が強度的に有利です。

リベット接合

リベットは、金属部品に穴を開け、リベットを打ち込んで接合する方法です。リベット接合は、航空機や船舶など、振動や温度変化に強い接合が求められる場所でよく使用されます。ただし、リベット接合は取り外しが難しく、強度的には溶接に劣る場合もあります。

接着

接着は、接着剤を使って金属やプラスチックを接合する方法です。異種材料同士の接合に有利で、部品の美観を損なわずに接合できる利点があります。ただし、溶接のように強度を持たせることが難しく、主に軽量な部品や内部構造の接合に用いられます。

溶接はその高い強度や多様な材料に対応できる点が大きな利点ですが、他の接合方法と比べて適用シーンに応じた使い分けが必要です。特に、ボルト締結やリベット接合などの方法は、溶接に比べて取り外しやメンテナンスが容易であり、設計段階での選択肢の一つとして検討するのが良いでしょう。

方法 特徴 強度 メリット デメリット 主な用途
ボルト締結 ボルトとナットで締付けて固定 取り外しが容易、メンテナンスしやすい ボルトが露出し美観を損なう、溶接より強度が低い 機械部品、建築、橋梁
リベット接合 穴を開けリベットを打ち込み固定 振動・温度変化に強い 取り外しが困難、溶接より強度が劣る場合がある 航空機、船舶、鉄道
接着 接着剤で接合 異種材料の接合が可能、美観を損なわない 強度が低く、重量物には不向き 軽量部品、家電、内部構造
溶接 熱で溶かして溶融・一体化させる 高強度、気密性・水密性が確保できる 取り外し不可、技術が必要 構造物、車両、工場設備

 

3.代表的な溶接の種類

溶接は、材料を接合する方法によって大きく3つに分類されます。

融接

熱で材料を溶かして接合する方法です。アーク溶接、レーザー溶接が該当します。

アーク溶接 TIG溶接 タングステン電極と不活性ガスを用い、高品質で美しい溶接が可能な精密溶接
MIG溶接 溶融ワイヤと不活性ガスを用い、高速でアルミニウムなどの非鉄金属の溶接に適した溶接方法
MAG溶接 溶融ワイヤと活性ガスを用い、高速で鉄などの溶接に適した溶接方法
レーザー溶接 レーザー光を用い、非常に高い精度と狭い溶接幅で、歪みの少ない高速溶接が可能な溶接方法

 

圧接

圧力や摩擦など機械的な力で材料を接合する方法です。電流を流し抵抗熱を利用した”抵抗溶接”、摩擦熱を利用した”摩擦圧接”、超音波による摩擦熱を利用した”超音波溶接”などがあります。

種類 特徴 用途
抵抗溶接 短時間、大量生産 自動車車体、家電
摩擦圧接 高品質、異種金属も可能 自動車、航空機部品
超音波圧接 低温、薄物に適合 電子部品、医療機器

 

ろう接

溶加材(ろう)を溶かして材料を接合する方法です。母材を溶かさないで、低温で溶ける合金(ロウ材)を接着剤として使用して接合するのが特徴です。似た言葉で”ロウ付け”があり、こちらが使われることも多いです。ただしJIS規格では温度で分類されています。

ろう接 JIS規格で450℃以上の温度で行うロウ付けと定義されている
ロウ付け 一般的な表現で、450℃以下の温度も含むこともあり、電子部品のはんだ付けも含まれる

4.溶接方法の選び方

溶接方法を選ぶ際は、用途や目的に応じた最適な方法を選定することが重要です。強度、精度、コスト、材料の特性など、さまざまな要素を考慮して選ぶことで、作業の効率や品質を最大化できます。以下では、具体的な選定基準とそれに合った溶接方法を紹介します。

目的 溶接方法 特徴・適用例
強度重視 アーク溶接 厚板や大きな構造物に適し、強度が必要な場面で使用。
精度重視 レーザー溶接 高精度な溶接が求められる微細部品や精密機器に最適。
TIG溶接 高品質な仕上がりが特徴で、薄板やステンレス鋼などに最適。
コスト重視 MIG/MAG溶接 作業効率が高く、量産向き。自動車産業や建築業で広く使用。
スポット溶接 高速で局所的な接合が可能、特に自動車業界などの大量生産で多く使われる。
異種金属接合 摩擦溶接 異種金属を接合するため、耐食性や高強度が求められる場合に使用。

 

5.安全対策

溶接の安全対策は、高温や火花、強い紫外線、感電、有害ガスの発生など、多くの危険要素から作業者を守り、やけどや健康被害、視力障害、呼吸器系の問題、さらには火災や爆発のリスクを防ぐために欠かせません。

項目 安全対策 理由
作業環境の整備
  • 換気を確保
  • 可燃物を取り除く
  • 消化器の設置
有害ガスや火花による健康被害や、火災を防ぐ
保護具の使用
  • フェイスシールドの着用
  • 耐熱手袋の着用
  • 長袖、長ズボンの着用
  • 溶接エプロン着用
  • 呼吸保護具
高温、紫外線、火花、有害ガスから作業者を保護し、火傷や健康被害を防ぐ
電気設備の確認
  • 高電圧設備の点検
  • 絶縁の確認
  • 配線や接続のチェック
感電を防ぐため
火災対策
  • 消化器の常備
周囲の可燃物への引火を防ぐ
健康管理
  • 作業後の体調チェック
  • 定期的な健康診断
  • 長時間作業を避け、休憩を取る
長時間作業に伴う、身体的負担を低減するため
ガス・薬品の管理
  • ガスボンベの正しい保管
  • 有害物質を取り扱う際の注意を遵守
  • 適切な換気
爆発や中毒を防ぐ

 

5.まとめ

溶接は非常に強力で多用途な接合方法であり、建築、自動車、航空宇宙など様々な分野で不可欠な技術です。融接、圧接、ろう接の各方法にはそれぞれ異なる特徴と利点があり、適切な溶接方法を選ぶことが重要です。用途や目的に応じて、強度、精度、コストなどを考慮した最適な方法を選定することで、作業効率と品質を最大化できます。また、溶接以外の接合方法(ボルト締結、リベット接合、接着)との比較も重要で、各方法の特徴を理解して使い分けが必要です。

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