前処理とは?画像検査における重要性を解説

【接写型ラインカメラ】

画像検査を検討する際に、”前処理”と呼ばれる作業を行うことがほとんどです。OK/NGを検出する画像処理とは何が違うのでしょうか?この記事で解説します。

撮像した画像には”ノイズ”がのっている

エリアカメラや、ラインスキャンカメラで撮像した画像には、背景や模様など検出対象ではないもの(=ノイズ)も画像化されていることがほとんどです。

8,192画素×8,192画素の場合、1枚の画像は約6,700万画素(67M)に相当します。この1画素ごとに輝度値を記録しデジタルデータ化されます。例えばモノクロ8bit場合、白~黒を256諧調(0~255)で表現します。そのため人が一見しただけだと同色に見える画像も、画素単位で確認するとわずかながらも異なることがほとんどです。

撮像したままの状態で画像処理で検査すると、狙い通りの判定にならなかったり、処理時間が長くなる可能性があります。そのためノイズ除去や明るさ調整といった前処理を行い、本来検出したいものだけが表現された画像へ変化させ、検査アルゴリズムに適した状態にします。こうすることで検査の信頼性向上に繋がります。

前処理はバランスが重要

前処理は掛けすぎると、悪影響にが出る恐れがあります。主な悪影響の例をいくつかご紹介します。

  1. 情報損失
    前処理を行いすぎると、画像から重要な情報を取り除いてしまう可能性があります。本来は検出すべき画像内の微細な特徴や、細部が失われ検出できなくなってしまいます。具体的には平滑化しすぎると、画像内のエッジや細かい特徴が失われてしまい、検査対象物の輪郭がぼやたり、細かいノイズが残ることがあります。
  2. 適応性の低下
    照明の角度が変化したり、撮像時のワークの位置決めがあいまいなケースは、検査対象物やその特徴が変化してしまいます。想定していなかった見え方になると、検出すべき特徴も除去される可能性があります。
  3. 計算コストの増加
    高度な前処理手法や、複雑なアルゴリズムを適用すると、画像処理の時間が増えリソースの浪費に繋がります。またリアルタイム性を求められる検査の場合、より性能が高いハードウエアが必要となりコストアップになってしまいます。

代表的な前処理の例

リサイズ (Resizing)

画像の解像度を調整して、モデルに適したサイズにすることがあります。これにより、計算負荷が軽減され、一貫性が確保されます。

グレースケール変換 (Grayscale Conversion)

カラー画像をモノクロ画像に変換することで、データ量を減らし画像処理の負荷の低減に繋がります。

コントラスト強調 (Contrast Enhancement)

コントラストを調整して、画像の特徴を強調します。一般的な手法にはヒストグラム均等化(Histogram Equalization)があります。見づらい画像を見やすくし、閾値処理がしやすくなります。

ノイズ除去 (Noise Reduction)

メディアンフィルタやガウシアンフィルタなどのフィルタリング手法を使用して、画像からノイズを取り除きます。

正規化 (Normalization)

画像のピクセル値を0から1の範囲にスケーリングすることで、データの安定性を確保します。

バイナリゼーション (Binarization)

グレースケール画像(各ピクセルが濃淡を値を持つ画像)を白黒の2つの値(通常は白と黒)に変換する処理です。一般的には、閾値以上のピクセルを白、それ以下であれば黒に変換します。その閾値画像内の物体や、特徴をより強調することができます。

色空間変換 (Color Space Conversion)

色情報を異なる色空間に変換することで、特定の色情報を抽出したり、色に基づいてオブジェクトを検出したりすることができます。

まとめ

前処理を行うことでノイズを除去し、検出したい特徴だけに絞り込むことができますが”闇雲に前処理を行えばよい”というものではありません。前処理を検討する前に、”ノイズの少ないキレイな画像を撮像できる撮像条件を検討”し、その上で除去しきれなかったノイズや、強調したい部分があれば前処理で対処することが重要です。

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